2014年10月31日金曜日

みんなの力

この映画は潤沢な資金に恵まれているわけではありませんので、
小道具も、大道具も、身の周りのものをフル活用しています。

移動撮影ドリーの代用の車椅子は、制作の清里のおばあちゃんの愛車だし、
それを整備してくれたのは、これまた制作の大島の元ダンのふみおちゃんです。

ヒロインが乗るママチャリは、ともちゃんが整備して家から運んでくれました。













(写真:石田知弘さん)


ロケセットの仕込みや木工指導をしてくれているのは、建築設計士の幸隆さん。
長岡木材さんは、貴重なスス竹や古材を分けてくださいました。
このほかにも、たくさんの方たちの協力を仰いでいます。

円谷さんのゴジラ1号が市井の人たちの手作業で大きな仕事をなしえたように、
生活に根ざしたモノたちを、多くの方たちの力も借りながら、
ていねいに作品に映し込んでいきたいです。

もともと映画は身辺を活写する欲求から始まりました。
フィクションも、現実に生きている人を写すので、
すべての映画はドキュメンタリーかもしれません。
そのNGシーンさえも、かけがえのない地上の生命活動の記録です。

謙虚に、そしてハツラツと、明日、11月1日クランクインします!

2014年10月29日水曜日

指矩(さしがね)とブツ撮り

10月28日、ブツ撮りを行いました。

ロケセットの仕込みで、指矩が登場。
目盛りが寸・尺の長さになっていて、大工さんのあいだでは、
センチやメートル同様に、まだ幅広く使われている単位です。
整理しておくと、一寸は約3.03cm。 一尺はその10倍。




                                                                 











日本古来の計量法である尺貫法のうち、
重さの貫のほうは消失しかかっていますが、寸・尺は健在でした。
そういえば百貫でぶってもう言わなくなりましたね。

ブツ撮りの締めはおでん。
撮影のためこの何杯もおでんを作ったので、最後はおでんパーティに。














2014年10月26日日曜日

リハーサル

10月25日、メインキャストの中田暁良(あきら)さん、泉水美和子さん、リーマン・F・近藤さん、
山崎智恵さんが集まって、ロケセットや野外でリハーサルを行いました。
撮影は藤本圭樹さん、藤本和美さん、録音助手に山口純子さんが加わりました。

クランクイン1週間前のリハーサルなので、
キャストとスタッフ、キャスト間で、
最終的な立ち位置や、心理、関係性、動きなどを確認します。

そのようにしてある場面に「居る」ことを調えていくのですが、
ふだん何気なくしている「居る」ことがじつはとても難しい……
ちゃんと居ることができたらそれはもう名画の入り口なのです。

撮影の合間を縫って、中田さんが山憲工務店さんの作業所で、
柱の担ぎ方と鋸(のこ)の引き方の指導を受けました。
先生は山口幸隆さん。
体でコツを覚えると、20キロ以上の柱を楽々担ぐことができるようになるんですね。













(杉やヒノキの香りが漂う作業場)


鋸は、引くとき力をこめて、押すときは軽く返すこと、
手や足で材を押さえる際、力を入れすぎて切り溝を狭めないことなどを学ぶと、
ギコギコだった切り方がウソみたいにシャキシャキ、スパーン!

みなさん、お疲れさま。
本番ではベストの佇まいで一期一会の現場とシーンをつくりあげていきましょう。













リハーサル後、高坂駅近くの「ラッセンブラ」で髪を短くし、引き締まった中田さん。
しゃきっ。

2014年10月24日金曜日

幼木たずねて三千里

シナリオのト書きに  「 親木の下の幼木 」 とありました。

この短いト書きが、わたしたちの長い旅の始まりでした。
ロケ地の杉林の中を覗いても、覗いても、立派な杉はたくさん生えていますが、
幼木が見つかりません。

探しあぐねて、カントクに、林業試験場の苗木でもいいですか、と訊くと、
杉林の中で自然に生えてる幼木のイメージです、と。

だからそれが見つからないんですっ。
人の手によって整えられた杉林には、実生の培地というべき倒木もなく、
たとえ芽が出ても地面に陽が届かず、幼木にまで育つのは難しいのです。

困り果てて、生まれも育ちもロケ地のトモちゃんこと石田さんに訊くと、
探しときますよ、と快い返事をいただきました。
でも、内心、簡単にはみつからないだろうなぁと ……

ところが数日後。杉の幼木いつ見に行きますか、とトモちゃんからのメール。
本日、赴くと、会えました、幼木くん!
















杉林の縁で、陽を浴びて、すくすくと育っています。

Hello, Hello, a young cedar tree !

2014年10月23日木曜日

再び、島はだれのもの?

この映画の島カントクは、前作 『 馬毛島クロス 』 で、
帰るに帰れない島・馬毛島(まげしま)をめぐる人々の姿を描きました。

この馬毛島をめぐって、昨日、漁師さんたちの共有地 「 入会地(いりあいち)」 に対する
画期的な判決が出ました。


KTSニュースより

『 西之表市(にしのおもてし)の馬毛島の一部の土地について、特定の集落の住民が共同所有し
ているという「入会権」の確認を求めた裁判の控訴審で、福岡高裁宮崎支部は、原告の訴えを退
けた一審判決を取り消し、入会権は現在も存続しているという判断を示しました。

 この裁判は、西之表市の塰泊集落の一部住民が、漁業などで使用していた馬毛島の共有地の
一部を開発会社に売却し、これに反発する住民の一部が「共有地は個人が勝手に処分できない
入会地」と主張し、入会権の確認を求めたものです。
 

 22日の控訴審判決で、福岡高裁宮崎支部の佐藤明裁判長は「昭和30年ごろの時点で集落の
住民が持っていた入会権が消滅したとは言えない」と述べ、原告敗訴の一審判決を取り消し、一部
住民の入会権を認めました。
 

 馬毛島の一部の土地の所有権を左右する今回の判決は、アメリカ軍の訓練移転の動きにも影響
を与える可能性があります。 』


MBCニュースより

『 馬毛島の開発を巡り、西之表市の住民らが島の土地の一部を共同で利用できる権利=「入会権」の確認を求めていた裁判の控訴審で、福岡高裁宮崎支部は原告の訴えを棄却した一審判決を取り消し、一部の住民の入会権を認めました。

この裁判は、馬毛島の環境を守ろうと過去に島の港を使うなどしていた住民らが、島の大部分を所有しているタストンエアポート社などに対し、土地を共同で利用できる権利=「入会権」の確認を求めているものです。

鹿児島地裁は2月の一審判決で、「入会権の実態は遅くとも1986年には失われている」などとして住民の訴えを棄却し、原告団は「不当な判決」として控訴していました。

22日出された控訴審の判決で、福岡高裁宮崎支部の田中哲郎裁判長は「86年以降も住民らの土地利用などに関する決定がなされており、入会権が全く失われたとは言いがたい」などとして、一審判決を取り消し、一部の住民の入会権を認めました。 』

 
馬毛島 
 
 
現在の馬毛島


2014年10月20日月曜日

部屋の作り込み

主人公の部屋の作り込みが進んでいます。

どんな部屋にしましょうか、そろそろ作り込みましょう、という制作部の大島と清里の打診に、
カントクは、グランドデザインを決めてからね、と言ったきり、音沙汰がありません。

ロケセットの中で行うリハーサルも迫っていることから、せっつくと、
「熊谷工業高校・建築科を出て、おじいちゃんの工務店を継ぐかと思いきや、
古材の取引にのめり込み、ガールフレンドの気配もない男の子の部屋」 …

というグランドデザイン?をもとに、
高校時代はバスケをやっていたのよね、パソコンで古材の販売をしてるんだよね、
などと生活空間をふくらませていきます。

協力してくださっている山憲工務店さんが、家の軸組み模型を飾ってくれました。
そして今日、取引先のKIJIMA建築工房さんから、模型を借りてきてくれました。




(写真:山口幸隆さん)









おうちの中のおうちの模型、
わくわくして、その中も作り込みたくなってしまいますが、今はお預けです。


2014年10月18日土曜日

見当識

10月17日、撮影を担当する藤本圭樹さん、藤本和美さんを中心に
カメラ・マイクテストを行いました。

撮影の難所と思われるところや、
ロケセットにおける動線、
照明の位置などを、カメラを回して確認しました。

寄居町の山の頂では、風の冷たさに震えましたが、
都心まで見渡せる夜景が美しく、朝から晩まで、晴れて空気の澄んだ良いテスト日和でした。













撮影は、シーンナンバー順ではなく、前後して撮るので、
スタッフもキャストも、今、どこにいるのか、
時間や位置、情況といった、全体の中での見当識を持つことが有効だと思います。


2014年10月15日水曜日

改稿のチャンス

よく言われることですが、シナリオは人目に晒して育ちます。
改稿のチャンスは、少なくとも3回あります。

一度目は、書いた本人による見直し。
二度目は、なるべく作者に遠慮なくものが言える人に読んでもらうこと。
三度目は、俳優による読み合わせのとき。

「カントク、これ、どんな気持ちで言ったらいいかわかりませーん!」
などと言われたら、チャンスです。
登場人物の存立のつじつまが合わなかったり、怪しかったりするときに、
こういう事態になることが多いからです。

読み合わせは、俳優のリハーサルのきっかけであると同時に、
シナリオが鍛えられる場でもあります。
しゃきっ。











2014年10月14日火曜日

秩父音頭

読み合わせで、男女が餅をつくシーンの掛け声を聴いていたときのことです。
リズムが生まれ、声に勢いがついて、
このまま歌のひとつも飛び出すんじゃないの、と思いました。

舞台になっている埼玉北西部の地元の方たちに、
この辺りで昔から口ずさんでいる歌はありますか、と聞くと、
首をかしげたあと、みなさん、

♪ ハァーエ 鳥も渡るか あの山越えて 鳥も渡るか あの山越えて

と歌い出します。
「秩父音頭」の頭でした。

長い歌ですが、抽出すると次のような歌詞です。

♪ ハァーエ 鳥も渡るか あの山越えて 鳥も渡るか あの山越えて(コラショ)
  雲のナァーエ 雲のさわ立つ アレサ 奥秩父  

  ハァーエ 花の長瀞 あの岩畳 花の長瀞 あの岩畳 (コラショ)
  誰をナァーエ 誰を待つやら アレサ朧月

  ハァーエ 主(ぬし)のためなら賃機(ちんばた)夜機(よばた)主のためなら賃機夜機(コラショ)
  たまにゃナァーエ たまにゃ寝酒も アレサ買うておく

  ハァーエ 燃ゆる紅葉を 谷間の水に 燃ゆる紅葉を 谷間の水に(コラショ)
  乗せてナァーエ 乗せて荒川 アレサ都まで

  ハァーエ 炭の俵を 編む手にひびが 炭の俵を 編む手にひびが(コラショ) 
  切れりゃナァーエ 切れりゃ雁坂 アレサ雪かぶる
  


日本の暮らしの中に、自然に発生するオペラ(歌劇)があり、
それが、笛や太鼓の鳴り響く祭りの中に受け継がれているのではないでしょうか。


https://www.youtube.com/watch?v=blo_5xTdIQg


2014年10月12日日曜日

読み合わせ

11日に、台本の読み合わせを行いました。

主演の中田暁良(あきら)さん、
ヒロインの泉水美和子さん、
主人公の祖父役のリーマン・F・近藤さん、
メインキャストの三人が顔を揃えました。

最初の読み合わせの面白さは、
作者のイメージと演者の体現の差異。
はじめからそれがぴたっと合っていたら、稽古なんかいらなくなります。

カントクは自分のイメージやアイディアを模索しながら伝え、
演者からは、生きた提案がどんどん飛び出します。
制作部の大島や清里も参加して、ホンから文字がみるみる立ち上がっていきます。












水戸短編映画祭のグランプリ受賞作 「 かたづけ 」 に主演した泉水美和子さんが
上映会の舞台挨拶のため帰路につかれたあと、
衣装合わせを行いました。










 











中田暁良さん















リーマン・F・近藤さん

2014年10月11日土曜日

香盤表(こうばんひょう)

香盤表を作成しました。
撮影シーンごとの登場人物や小道具、
俳優の入りの時間、食事のタイミングなどをまとめたスケジュール表です。




















これを香盤表と呼ぶのは、香を焚く香盤の升目に、
表の格子が似ているからだそうです。
歌舞伎などでは、出演する俳優の名前と出場(でば)を表したものを香盤と呼びますね。














香や線香は、むかし、まだ時計がなかったころ、
それが燃え尽きるまでをひとつの区切りとして、
時間の単位として使われた歴史もあるようです。

升目の形が似ているというだけじゃなく、
時間芸術でもある映画制作の進行表としては、
なかなか由緒のある、香り立つ呼び方ではないでしょうか。

2014年10月10日金曜日

木組み

大道具や、俳優の木工指導として協力を仰いでいるのが、寄居町の山憲工務店さん。
制作部のメンバーの実家でもありますので、頼もしい限りです。

山憲工務店さんは、今では継承者が少なくなった木組みの家を建てるのを得意としています。
木組みは、釘や金物などを使わずに、木に切り込みなどを入れてはめ合わせ、
木と木を組み上げて家の骨組みをつくる技術です。

山憲工務店さんが手がけた、代々木公園そばの、ノルウェー・カフェ 「 フグレン 」
打ち合わせなどでときどき行きます。
自家焙煎のコーヒーもとてもおいしいのですが、わたしはいただく前に、
バリスタさんたちにラテ・アートをせがんでわが身を覗き込んでいます。

 


  




2014年10月9日木曜日

畑花壇(はたけかだん)

この映画の舞台は、埼玉の北西部です。
このあたりは、首都圏のベッドタウンとして宅地化が進んでいますが、
畑がまだたくさん残っています。

その脇を歩くと、作物の傍らに花が植えられていて、目を楽しませてくれます。
わたしはこれを勝手に畑花壇と命名して、
そういえばうちのおばあちゃんも、畑に好んで矢車草を植えていたなぁ、と思い出します。
これからの季節は、いろとりどりの菊が咲くのが楽しみです。

中には、野菜を作るのをやめて、こんなふうになってしまった畑もあります。

2014年10月8日水曜日

動線

映画の画面には、幅と高さと奥行きがあります。
そこまでは絵画と同じです。

そこに時間軸が加わり、人物や物が動くことで、文字通り、動画になります。
また、カメラが動いたり、カメラと被写体が同時に動いたりして、
豊かな動線が生み出されます。

画面がパッパッと切り替わってゆく小気味のいい映画も面白いですが、
1カットの時間が長い、いわゆる長回しの映画も動線を味わう楽しさがあります。

ダルデンヌ兄弟の 「 少年と自転車 」 のシーンとカットを数えてみたら、
正確ではありませんが、およそ93シーンのうち73シーンが1カット、
じつに80パーセントが、1シーン1カットの、長回しの映画でした。
しかも情念と緊迫感に満ち満ちているのですから、すごいですね。










2014年10月7日火曜日

だるまストーブと薪

昭和の中頃まで、待合室や教室などを暖めていた、だるまストーブ。
ロケ地の長岡木材さんでは、まだ鉄瓶とともに現役です。

薪は古材の端材で、ここでは捨てられるものがほとんどありません。

                        

2014年10月6日月曜日

階段だんす

ロケでお世話になる長岡木材のおかみさんは、
「わたしたちはふるざいって言わないよね。こざいって言うよ」
と仰います。

それでもあえてふるざいというタイトルにしたのは、ふるざいが人の手を経てこざいになっていく過程があるような気がしたからです。

英語の Lumber には木材という意味のほかに、がらくた、厄介者という意味もあります。

古材は柱や梁といった家の一部だけではなく、使い込まれた家具などの古民具も含まれます。
階段だんすもそのひとつです。



2014年10月5日日曜日

ロケハン

9月のロケハンでなかなか適地が決まらなかった寄居町の山林。
今日、やっとめぐり合いました。
みかんが色づきはじめた風布(ふうぷ)の里の山頂付近です。

2014年10月3日金曜日

映画「古材」の制作

これから随時、映画「古材」の制作についてお伝えしていきます。

(赤城山麓の古材倉庫)